【ラノベレビュー】インテリぶる推理少女とハメたいせんせい

 

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インテリぶる推理少女とハメたいせんせい In terrible silly show.Jawed at hermitlike SENSEI (HJ文庫) 第1巻書影

今回も過去に書いた文章から投稿します。HJ文庫と聞いてこの作品を思い浮かべる人も多いはず。

 

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人間は無作為にテキトウに動くのだ、と主張する文芸部顧問になった「せんせい」と、この世の全てが理屈通りに動いている、と信じて疑わない中学生の文学少女「比良坂れい」の2人が孤島を舞台に繰り広げる壮絶な頭脳戦と恋愛模様(文庫裏表紙より)――こう書くとなんてことないライトノベルのようであるが、騙されてはいけない。2013年に発表されたライトノベルとしては最大の問題作で、原題は「せんせいは何故女子中学生に○×☆※をぶち込み続けるのか?」。この作品を問題作たらしめているのは以下の引用に象徴的だ。

強姦していくならばその女子中学生たちの人間ドラマを描いた後で、というのがセオリーなのだろうけれど(キャラ紹介→強姦→後日談という一連の流れ)、前戯にはあまり興味がないのでそういうのは三行ぐらいで済ませたかった」

実際、少女たちが次々に犯されていくことが事実としてはわかるのだが、そういった描写はなく、そこに一切の意味も与えられない。「せんせい」は先ほどのあらすじのように「無作為にテキトウに」動くからだ。しかも本作のヒロインである比良坂さんは、自分が強姦されかけても、クラスメートが強姦されても、そのクラスメートが妊娠して恋人が訴えに来ても、ろくでもない論理を次々と並べ立てて、主人公であるせんせいを擁護してみせる。それが本作の「頭脳戦」であり「恋愛模様」であり、物語の骨格だ。そうして「せんせい」の犯罪は露見しない。

一切の描写が省かれた事件の提示と、饒舌でときにぺダンティックな語り、倫理観の欠落した主人公。良識のある読者なら途中で投げ出しても仕方ないが、物語のラストでは一応メタミステリーと呼べなくもない仕掛けもある。プロットも案外よく考えて作られている。

 

本作が発表されたのは2013年3月。作者の第二作を待っている読者は私以外にも多いはずだ。