【ラノベレビュー】給食争奪戦 (電撃文庫)

給食争奪戦 (電撃文庫)

 第20回電撃小説大賞<電撃文庫MAGAZINE賞>受賞作。小学生を登場人物とした4つの短編と、最後の1編はそれまでのストーリーで登場してきたキャラクターたちが高校生となって活躍する、全5編の群像小説。表題作「給食争奪戦」は年一回の究極の給食デザートであるケーキをめぐって、一人の少年がクラスのボスに挑む話だ。小学校の教室であれほどの政治的やりとりが行なわれる様はちょっと想像しがたいが、「給食」を扱った小説というのがまず新しく、それだけで十分面白い(※)。

 他の収録作は、金目のものを要求されるいじめられっ子のために、万引きを働いてその子の机にこっそり入れておくという義賊(?)の話や、消しゴムフェティシズムの男の子の話など、小説の題材の切り取り方はなかなかおもしろく、物語の筋もそれなりだ。

 さて、給食のデザートや消しゴムがクラスの最大の関心事となる小学生は無邪気でかわいいものだが、ある意味ではほんの些細なことが火種になりかねないのだとも言える。そういった危うさの上に立っている作品だと言うことも忘れてはならないだろう。作者のアズミが中学校や高校、あるいはもっと別の集団で同じ趣向の群像小説を書くとしたら、どんな切り取り方をするのか。次作に注目したい。

 

※なお、小学生たちが自分たちの間で疑似貨幣を作って国家運営を始めてしまう谷崎純一郎『小さな王国』がある。