【ラノベ&アニメレビュー】異能バトルは日常系の中で(GA文庫)

f:id:victor_kabayaki:20211023102949j:plain

異能バトルは日常系の中で 第1巻 書影

 時間や空間を操る力――そんな異能に目覚めたとある高校の文芸部員たちが、お決まりのバトルをするでもなく、ただただ平穏な日常を過ごすというラブコメ作品。

 

 アニメ版は原作で主人公が乱発した引用ネタをカットするなど、変更点は多いものの、ヒロインのひとり・櫛川鳩子を演じた声優の早見沙織が140秒に及ぶ長台詞を披露したことをはじめ、アニメならではと言える演出を取り入れた展開が目を引く。

 

 また、強大な異能を手にしたはずの少年少女たちが、ありふれた思春期の葛藤や人間関係のトラブルに悩みながらも生きていこうとする様子は、アニメ版でよりストレートに描かれていた点も特徴的だ。

 

 「異能は人を傷つけるための力でも、誰かを幸せにするための力でもなく、ただ最高にかっこよくて、ただかっこいいだけでいい」――異能に最大限の賛辞を送りつつ、同時に日常の尊さを謳う主人公の言葉は、原作に劣らないアニメ版の魅力を見事に代弁している。